自分の中からなくなった
走りたいという気持ち

昨年からのコロナ禍で、思うようにレース参戦やトレーニングが難しい状況が続いていると思います。
髙村さんはどのように過ごされていましたか?

実は昨年、勝ちたいという気持ちがなくなって、まったく走っていない時期がありました。医師という仕事に就いて2年。その忙しさが増して思うようにトレーニングができない日々が続いたり、結果を強く意識してトレイルランレース参戦やトレーニングをすることに耐えられなくなったのです」

そうだったのですね。でも、結果を意識することは
悪いことではないと思いますが。

「私がトレイルランを始めたきっかけは、大学時代に所属していたスキー部のオフトレでした。これだけきつくて、これだけ達成感のある競技があるんだというのに衝撃を受けて、純粋に山を走ることがどんどん好きになっていきました。レースについても勝てればいいなくらいで、最初から結果を意識してスタートしたことはなく、楽しんでいたら優勝がついてきた場合がほとんどでした。でも周囲から結果を期待されたり、ライバル視されたりすることを自分自身が過剰に意識していて、楽しむ気持ちより勝ちたい、勝たなければいけないという気持ちが強くなっていたのに気づいたんです。ただでさえきつい競技なのに、結果だけ、タイムだけを追い求め始めると本当にしんどくて、趣味なのになんでこんなに苦しまなければいけないのだろうって……。

それで、いったん走ることから離れてみたり、まったく違う目標を立てて進み始めたりもしましたが、自分の中に山を走る競技の中で世界一になりたいという目標や気持ちがまだあることに気づき、そこから気持ちを少しずつ戻している最中です。まだ結果を求められるのがしんどいので、今年は本当に出たいレースと選考レースにしぼって参戦するだけにとどめる予定です」

ハセツネだけは
私にとって唯一無二

そんな状況をお聞きすると、周囲からどうしても優勝(4連覇)を期待される
ハセツネの参加を考えるのはつらいですね。

「いえ、ハセツネだけは何があっても出たいと思っています。私の中で、山を走るのはあのレースのためで、もし今年の開催が実現するなら、何があっても挑みたいと考えています。台風やコロナで2年間開催がなく空いてしまいましたし、当日までにどこまで戻せるか分かりませんが、ゼロからの挑戦者として走りたいです」

ハセツネのどのあたりが他のレースと違うのですか?

「普通のトレイルランレースでは勝った、負けたという、誰かと勝負している感覚が強いのですが、あの9時間半はずっと自分と戦っている感覚。その時の自分にいかに甘えず、自分の力を出しきれるかがすべてで、まったく別物なのです。その自分への挑戦が面白く、楽しいと感じます。もちろんレース中は苦しい時間が続きますが、私の場合は苦しいより楽しい気持ちが勝ります。

初めて出た2015年は途中トップを走れました。結局は後半に抜かれ負けてしまいましたが、あの時も負けたという気持ちはなくて、フィニッシュできてすごくうれしい気持ちが勝りました。そんなふうに思えたレースは初めてで、あの日から私の中でハセツネは唯一無二のレースになりました」

オフィシャルパートナーの
スペシャルコンテンツ