コロナ禍で国内にいる今、自分に足りないのは、
ギリギリの争いでしか得られない実践のレース感覚

海外レースはスタートからフルスロットル
下りはぶっ飛んでいて僕も置いていかれます

海外のレースを多く走った経験から、世界のレースと日本のレースの一番の違いは何でしょうか?

「間違いなくアベレージのペースが速いのは確かですが、まずはスタートダッシュが違います。日本のレースのスタートは遅いです。海外では最初からフルスロットルで走らないとだめですね。サバイバルのようなレースなので、最初に出遅れたら取り戻せないです。登りは日本のトップ選手なら対等に渡り合えると思います。大変なのは、下りですね。海外の選手はぶっ飛んだ下り方をする選手が多いです。僕も置き去りにされることがあります。前半の登りで良いポジションにいても、後半の下りで一気に順位を落としてしまいますからね。ここが陸上競技と山岳の一番の違いで、スキルアップするのはなかなか難しいですね」

Skyrunner World Series ( Photo by Sho FUJIMAKI )

スカイランナーワールドシリーズは世界各地の山岳で開催されるワールドカップ。2019年、上田瑠偉はイタリア・リモーネで開催されたシリーズ最終戦スカイマスターズで、ライバル、オリオル・カルドナ(スペイン)を12秒という僅差で振り切り優勝。年間獲得ポイントで逆転し、日本人として初の快挙であるスカイランナーワールドシリーズのチャンピオンに輝いた。

今年の目標を教えてください。

「昨年中止になったスカイランニング世界選手権が7月にスペインで開催されるので、そこが最初のターゲットです。海外のライバルたちは、結構仕上がっている様子が伝わってきますが、僕は海外レースからしばらく離れてしまったので、何とも言えないのですが、とりあえずメダル圏内には入りたいです。その後は8月にUTMBのOCCに出場予定です。そして、今回の予選に通れば11月にタイで開催されるトレイル&マウンテンランニング世界選手権ですね。前の大会から期間もあいているのでしっかりと調整したいです」

ずばり、現在は海外で戦えるコンディションになっていますか?

「そうですね……。もちろんディフェンディングチャンピオンとして負けるわけにはいかないですよね。フィジカルに関しては、パーソナルトレーニングをしっかりと積み重ねていて、自分でも成長を感じています。ただ、実践でギリギリの戦いをしていないので、成長しているという実感が湧いてこないんです。日本で過ごしていて、心の準備が緩い部分があるのかもしれません」

来年以降のビジョンを教えてください?

「ひとつの区切りと思っているのは、スカイランニングの世界選手権で一位になる事ですね。そうしたら日本に戻って、遠征も減らしてウルトラトレイルに挑戦したいと思っています」

選手以外の普及活動なども力を入れるのですか?

「2020年3月にコロンビアスポーツウェアジャパンを退職して一人でプロとして歩み始めてからは、スポンサー収入を得て競技に集中するのがプロだと思って、そこを目指していました。しかし、さまざまな経験をした結果、視野が広がって普及活動やSDGsなどについても、取り組んでいきたいと思っているのが現状です。トレイルワークをしたり、ネットショップの売り上げを環境保全のために寄付したり、若手の育成をしたり……。やりたいことはたくさんあるのですが、とりあえず数年は競技に集中します。競技以外のことに、どの時点で力を入れていけばいいのかを葛藤している際中ですね。トレイルランニングは生涯スポーツなので明確に引退とかはしないだろうし、両立は簡単なことではないと思っています」

今後も活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

上田 瑠偉
Ruy UEDA

1993年10月3日生まれ
長野県大町市出身。駅伝の名門、佐久長聖高校出身。
3年時は主将を務めたが、度重なる怪我により3年間満足に走れず、中学時代の自身の記録すら更新できずに卒業。高校卒業後、早稲田大学に進学するも箱根駅伝は目指さず、走ることを楽しみたいという想いから陸上競技同好会に所属。「10代最後の思い出づくり」にと出場した、東京・柴又100Kで5位入賞を果たし、現在のスポンサーであるコロンビアスポーツウェアにスカウトされトレイルランニングを始める。
デビュー戦となったレースでいきなり大会新記録で優勝を果たす。続く2戦目は国内で最も権威ある大会、「日本山岳耐久レース」で6位入賞。その後数々の大会で優勝し、記録を更新している。
上田瑠偉がトレイルランニング界の脚光を浴びるきっかけとなったのが、2014年の日本山岳耐久レース。大会記録を18分も更新し、夢の7時間切り目前まで迫る走りで最年少優勝を果たした。2016年には、垂直志向が高く、標高の高い山が舞台となるスカイランニングのU-23世界選手権での優勝に続き、世界最高峰のトレイルランニングレース「UTMB」のCCC®でも準優勝となる。2019年にはSkyrunner World Seriesにてアジア人初の年間王者に輝いた。

Editor’S Voice

プロとして一人立ちしてから、一気に世界の頂点に上り詰めただけではなく、アスリートとしてさまざまな側面からトレイルシーンを見ることができた。だからこそ、発見・希望・不安・葛藤など多くの思考が頭を渦巻いているのだろう。やりたいことは山積みだ。世界を獲った男はまだまだ大きくなる。そう感じるインタビューでした。

Tatsuo TAKAHASHI(TRAILRUNNER.JP)

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